
ウィーンの誇る世界遺産、シェーンブルン宮殿を歩きました。宮殿内部のいたる処にはめこめられた壁面の絵画、天井画、彫刻、ロココ様式を残した部屋、部屋、部屋。会場を埋める観光客の頭越しに私はこの近づき難い部屋の雰囲気に浸るのが精一杯でしたね。
次の部屋、又、次の部屋と彷徨う迷宮の会場内部。普段の展覧会場なら、自分の見たいと思う一点に絞って、それを見て満足出来るのですが、ここではそういうわけにはいきません。ガイドの案内に足を運ばせるだけですから。
さて、最後はいよいお楽しみのシェーンブルン宮殿のマリオネット劇場・・と書き始めましたら、細君からストップがかかりました。私がこれから書くこの劇場は勘違いでシェーンブルンの劇場ではありませんよ、と言われてしまいました。
はて、それなら何処の劇場なの?申し訳ないのですが、其処がどこだったか四人とも覚えていません。ウィーンと云う街は何処を歩いても白と灰色の尖塔に囲まれ、由緒ある時代をあらわしています。最後の結論は、今度はもう一度ウィーンだけ二、三泊の旅行を試みよう、なーんて笑い話で終わりです。
でも、其の場所、名前は分からなくても、現実に見たことは夢ではありません。其の劇場の舞台から五、六列目の中央に四人揃って座れたのですから。
舞台は、弦楽器が二つ、コントラバス バヨオリン、四人位いたかしら。流れた曲目は歌曲ではありませんでした。あの「美しき蒼きドナウ」後ろの席で、ここはオペラではないのか?とブーイングと云うわけでもないのだけれど、戸惑った感じがありましたね。
デモ演奏も適当に終わらせ、ステージに現れたテノール歌手オペラの一場面です。声に呼び寄せられるように、舞台の袖から現れる妖艶な美女と云う設定ですね。華やかな歌の掛けあいから、ラストのソプラノの悲痛な叫び、男のなおも、愛を追い求める激しい手の動き、女は打ち伏せるように楽屋え消える。
これからが、この劇場の本番。舞台も広がるように、楽器類、マイクなど、袖口の奥に目立たなくセットし直しされました。舞台の周りは薄暗く、中央は円を描くように照明されてます。
客席の暗がりが急にざわめきます。一人の男が背中に等身大の人形を軽々と背負い、舞台の階段を駆け上がり人形を抱きかかえ、お客に向い挨拶をさせます。ところが、人形が男の手が離れると、もろくも、くずれてしまいました。仕方なく、男は舞台の裾に身をひそめていた楽師に音楽をと、サインを送ります。
すると、どうでしょう!音楽の流れに身を任せ、人形は踊り始めたではありませんか!男と二人で蝶が絡み合うように歌を歌い、素敵な舞踊をみせてくれます。そして、これはモーツアールトの歌劇<魔笛>です。
終幕近く二人の掛け合いの言葉<パ、パ、バーパパゲーノ> <パ、パ、パーパパゲーナ>でも、所詮は人形。男が手を差し伸ばしても、もう脚を上げる気力もありません。男は抱きかかえ、もう一度ネジを巻くのですが、彼女は立ったまま動きません。無理に引き寄せようとした時、人形の手が不意に男の頬を思い切りひっぱたいて、彼女は倒れてしまいます。
言葉で書くと、こんな紙芝居になりますが、発声も、踊りも プロ級でしたよ。昔は本当の人形劇、とか 子供が怖がるギニョウル劇を見せるところも有ったと聞きます。私は充分楽しめました。
しかし、この劇場はどこだっだのでしょう。ご存知の方、いらっしゃいますか?