2010年8月20日金曜日

ウィーン旅行より 第2回 ボードレール


 I君とはその後半月以上、お互い音信不通の状態のままになっていましたね。
 其の後、OH、HOW DID IT GO!

 彼と私には、フランスの詩人「ボードレール」に共感関係がありました。私はボードレールの「悪の華」見出しの前書「読者に~」を、W大の文学部にいたもう一人の友人T君に
「これ訳してみないか?卒論に必要なんだ。」
 と持ちかけられ、原稿用紙1枚位ならと、取り組む事にしました。
 単語は辞書を引けば済むけれど、文の脈絡も理解出来ず、単語を並べ睨めっこです。後は自分の頭の中で、詩を作り上げる作業。
 訳詩が有る筈だからと私は神田の古本屋を歩き周りましたよ!立ち読みは、新宿紀伊国屋で何時間でも慣れていましたので、メモを取ることが苦手な私は「記憶する」というより「理解して来る」ことに腐心しましたね。
 でも、其の訳を読んでも、何処がこれが名訳なのか、この中の何処にボードレールが居るのか分かりませんでしたね。ことに、最後の読者に呼びかける語彙の貧しさ、言い回しには唖然とします。
 最後の読者への呼びかけの言葉、

「おお、お前達 この偽善者な読者よ」
  
私の言い回しと並べれば、こうも違います。

「おお!君たち、この猫被りの諸君よ!」 

この様な文体で、私は彼に手渡し凄く喜ばれましたよ。 

 Aimer a loisir   気まぐれな 旅への 誘い
 Aimer et mourir    愛 も 死も
 Au pays qui te ressemble! 其れも 似たような 裏 表 さ


 I君の心の葛藤も、このボードレールのこの詩が物語る何か哀しみが疾走していた筈。
 二百十日の過ぎた秋口の避暑地の海辺、あの海の見張りやぐらも取り外され、海の家もなくなり淋しさは、打ち上げられたあれら大木の虚しさ。I君は江の島の浜辺で、ざわめきの消えた枕木に身を寄せ・・・・
 これも若き日のウェルテルの哀しみの一ぺ―ジ。 

つづく

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