2010年9月22日水曜日

仲秋の月


 
 夜中、蟷螂を探しに外に出たら、薔薇の枝に羽根を畳んで眠りについている蝶を見つけました。

 私も寝ます。
 オヤスミ。

 仲秋 の月
 蝶の翅 たためば花 也 新月の宵
                      ノブ

2010年9月21日火曜日

ウィーン旅行より 第6回 映画 未完成交響楽

若干、 21才のシューベルトの初の社交界デビュー。演奏会は勿論弾きこなすことになにも恐れは無い筈。でも 貧困の質屋通いの不規則な生活。身の回りには、礼装を整えるものなどなにもありません。どうすればいいのでしょう。

 頼みの綱は、あの質屋の店の娘、エミリーだけです。 その話を聞かされた彼女は飛び上がって喜びました。 そして シューベルトの手を取り、お店の倉庫、蔵の中に連れていきました。
  
 そこには、 ありましたよね。質草とは云え、新品同然の燕尾服。 ただ、サイズがピッタリとはいきません。帽子、靴もそうです。
「でも、ピアノの前に座ってしまえば、誰もわからないわよ!」
 エミリーの言葉は、 若き日のシューベルトの心に火を付けてくれました。 そして、肩に掛けるコートさえ用意出来たではありませんか。

 そして、その夕べがやってきました。 ウイーン恒例の、キンスキー侯爵夫人の音楽界。侯爵邸の車寄せに集まって来る、黒塗りの馬車。高貴、華麗な衣装に包まれた麗人達。
宮廷に仕える高官、制服の徽章をちりばめたナイト達。クローク係は出番を惜しむこともなく鮮やかな対応です。 フロアーを仕切る厚いドア、 時折漏れる密やかなさざめき、グラスの触れる音、若い女性の嬌声。 仕切られたフロアーは見下ろす外の闇が屋敷を包みこんできています。 

 そこへ、夕闇を押しのけ黒のコートにハットを被り何か場違いを思わせる人物がやってきます。ドアーマンと喋っています。車寄せから、小走りで階段を上がり、フロントのクロークに招待状を見せていますね。やはり彼です。シューベルトが来たのです。 係がコートとハットを預かります。 

 其の時の係の顔、二人で唖然と顔を見合わせます。 衣装掛けに掛けたコートの背中にぶら下がっている質草の札ハットの中からも吊り下がる同じ札。 でも、シューベルトは平然と今夜の世話役に導びかれ、会場に入るのです。 人の背中には目がありません。 ほら、このコートの背中にも 垂れ下がっている 質札の紐。ああ、何か悪い予感がしますよ。カメラが、その 背中を執拗におい かけていきます。後ろの方からはもう指差す囁き、笑いを堪えた声が。。。。

 つづく

2010年9月9日木曜日

ウィーン旅行より 第5回 映画 未完成交響楽

 この物語はまだ若かりし日の、健康に冒され、貧困状態にあったシューベルトのストーリーになります。 当時、シューベルトは小学校の代用教員で、18才位。 音楽は父や兄に学び、その頃すでに作曲を始め、野バラ、菩提樹などの歌曲に手をそめていた時代です。 まだ十八、九の彼が小学校の代用教員だったのは、この校長が彼の父親だったからでした。 

 そんなある日、学校にシューベルトに面談したい人物が参りました。校長室の父親に呼ばれ、、亦何か失敗をしたのかと、恐る恐る入ってくる十八才の未成年。だが、そこで待っていた人物は思いがけない幸運をシューベルトにもたらすのです。

 訪ねて来た人物の自己紹介はウィーン王立学友協会の主任技士。そして彼の口からの言葉、シューベルトをなんと感激させたことでしょうね。ウィーン社交界を牛耳る、エステルハージ伯爵のコンサートに招待作曲家として招待を受けたのです。
 彼は11才の頃、王立礼拝堂の少年歌手でもあり、変性期を迎え学寮を去った経歴があります。パイプオルガンも弾けます。 曲目は今までずうーと温めたいた曲が浮かびあがります。  でも、気がかり心配が有るのですよ。そんななか、当代随一の伯爵夫人のコンサート会場に、彼はどうやって登場出来るのでしょう。

つづく

2010年9月4日土曜日

ウィーン旅行より 第4回 映画 未完成交響楽


 シューベルトといえば、私の年代では先ず歌曲に馴染むゲーテの詩を思い浮かべます。それらを指折れば片手の指が、直ぐに握り拳になりますよね。菩提樹、野中のバラ、魔王、冬の旅、 美しき水車小屋の娘・・・  
 ゲーテは、 ウイーンの音楽の世界でも、非常に強い影響力を振るった鉄人です。あの階級制度の厳しかった王宮管理のもと、シューベルトが楽友協会の会友になるきっかけ、又は、交響曲が未完に終わったいきさつ、 立ちあがるまでのいきさつ。映画は物語りかもしれません。芸術は才能だけでは世に認められない。きっかけが其の人を押し上げるのだ。

 ウイ-ンでの当時のシューベルトの生活の設定は、村の小学校の代用教員。彼は初めて村の質屋の門をくぐります。背中の愛蔵のギターのケースをカウンターに降ろし蓋を開け、愛しむかのように、其の本体を撫でる指。
 その仕草を見ていた若い質屋の娘が、父親から回ってきた値段の金額を割り増しにして、 会計に回してしまうのです。シューベルトは思った以上の金額にと迷いながらでていきます。質屋の若い娘は、二階の自分の部屋の窓から、その様子ながめながら一冊の本をシューベルトの足元に投げるのです。驚き見上げる彼。娘は窓から笑いながら、さけびます。
「それはうちの質流れの詩集です。読んでください。」
 彼は慌てて拾い上げます。  そして、つい余計な一言をさけびます。
「さっきは なにか余計に金額を戴いてしまったように思うのですが・・・」
娘はあたりを見回し、階段からかけおりてきます。
「そんな事が、パパに聞こえたら大変だわ、大きな声をださないで。」
と、手を引張り、坂の横道に連れて行くのです。 

 坂から見下ろす泉の周りには洗濯物を持ち寄った村の主婦が集まり、楽しそうに歌を歌い始める所でした。彼は娘を離れ近くからその様子を真剣に聞きいっているのです。
娘がそばに来て、
「あの歌はいま村中の人が歌っているのよ。」
彼は娘の顔に向き合い
「あの曲は、僕が作った歌なんだ。」
娘は、即座に
「そんな筈はないわ!あの曲はウイーン中で歌われているのよ。もし貴方の曲なら、凄い収入が有る筈よ。信じられないわ!」
彼は俯き加減に、こう言いました。
「私の作る曲は、覚えやすく、誰でもすぐ歌えてしまうのです。だから、私の楽譜は売れないのですよ。」

 娘はそういう彼が大好きになってしまうのです。  

つづく            

2010年9月2日木曜日

蟷螂 カマキリ



 

 
 
 
 
どこからか蟷螂がやってきました。
 まだ若い蟷螂ですね。この薔薇の木の下に昔、私がデッサンをしました蟷螂が埋められています。
 それで挨拶に来てくれたのかもしれませんね。

 イカルスの蟷螂 秋をはぐれたる 
 薔薇の木に 蟷螂 来たり 二百十日  ノブ